旧支配者と旧神 〜クトゥルー神話〜

 太古の支配者

人類の発生より遙かな以前の太古、この地球を共に治めていた旧支配者と大いなるイースの種族が互いの 均衝を破り旧神に歯向かった。宿主の体内に寄生虫として存在する肉体を持たない知性だけの存在、大いなる イース種族は、治めていた地球の取り分を棄て時間を超え、二百世紀の未来にてその時代の支配的生命体である蜂の種族に宿った。

 旧支配者と旧神の戦い

 一方旧支配者は、ベテルギウス座に棲む旧神に挑み、護符、印形、象形文字の 刻まれた 石板の収集品を奪い、セラエノ星近くの惑星にそれらを据えた。旧神は謀反に激怒し、 旧支配者を罰しようとした。アザトースに率いられ長時間戦い続けた 旧支配者も、ついには旧神に破れ、ことごとく幽閉あるいは追放の刑にあった。

 旧支配者の幽閉

名状しがたき者ハスターは アルデバランを有するヒヤデス星団にあるカルコサのハリコに追われた。 大いなるクトゥルーは太平洋のポナペ にある海底都市ルルイエ に魔力でもって死のような眠りに落とし込め られて幽閉された。風に乗る者イタカは氷に閉ざされた北極の荒野に封じ込められた。 ヨグ=ソトースは時空連続体を越えて混沌の中に追いやられ、アザトースは謀反の際に指揮を執った罰のため意志と知性を奪われた。ツァトゥグァは アザホースやアトナク=ナクアといった小神と同様、ヒューペルボリアのブーアミタドレス山下の洞窟に閉じこめられた。クトゥグアはファマルハウト星に流され、 魔人ガタノトーアは原始時代のムー大陸ヤディス・ゴー山頂にある、ユダヤ星から来た甲殻生物の築いた古代の要塞地下に封じ込められた。 旧支配者の中でナイアーラトテップだけは、幽閉或るいは追放の処罰から逃れた

 旧支配者 従者

 
旧神との再戦を前に旧支配者は自らを自由にするべく、休みなく働く地獄の従者共を生み出していた。 しかし、無尾両生類のルルイエの深き者共でさえ、クトゥルーを死の眠りにとらえる旧神の強固な印形、 即ち、大いなる印を他の場所へ移すことはおろか、それに触れることさえ出来ないでいた。

 ヨグ=ソトース

 
ヨグ=ソトースを自由にし外世界から予言された帰還を可能にする筈の歌である第九の歌は、ネクロノミコン無削除版七五一頁に見いだすことが出来るが、人類或いは非人類の誰一人として成し遂げた者はいない。時に何者かが大いなる印を移し得た場合でも、 旧神自らによる直接の介在か、或いは多数の従者の手によって、大いなる印は新しく置き直された。

 予言

旧支配者の窮極的な解放と帰還はアルハザートが予言しており、我々人類はやがて来たる時、 旧支配者が再び宇宙の支配権をめぐって、旧神と相交える事を考えなくてはならない。

 人類への警告

 人間こそ最古或いは最後の地球の支配者と考えてはならない。生命並びに物質の大部分がそれのみにて存在するとも考えては ならない。過去、現在、未来を通じて、旧支配者なるものが存在する事を知らなくてはならない。我らが知る空間にではなく、空間の間にて 旧支配者が存在することを知らなくてはならない。時に臭に旧支配者の気を悟ることがあるももの、 それは霊怪なる臭いにして、千々に齢重ねた生物の臭に似る。人が今、支配するものは全て、かって旧支配者が支配いたす所であり、程なく旧支配者が甦り、人が今支配する所を再度支配する事となる。夏の後には冬が来、冬が過ぎれば夏が来るが道理のように、旧支配者が再びこの地を統べるが定めゆえ、旧支配者の力を秘めて弛まず待ち受けたるが、時節来れば何者も旧支配者に刃向かうことが出来ず、全ては旧支配者の支配下に置かれる定めとなる。ヨグ=ソトースは門であり、鍵にして守護者である。門を知る旧支配者のために道が開くのを余儀なくされ、旧支配者の望むままに旧支配者 に仕えるが、知らぬままに道を開し者が旧支配者を知るは刹那なり。

 旧支配者クトゥルー


 
 先に約されしごとく、クトゥルーは旧神らに捕らえられ、大洋の深奥に投げ込まれ、水没した都ルルイエなる大いなる廃墟の 只中に聳え立つと云われる富士壷のこびりつきし塔に入れられ、旧神の印にて封じ込められるが、自身を幽閉せし者らに激怒致せば、 彼等の怒りを買い、彼等再び彼に下りて彼に死に似たるものを課し、彼をして夢見るままに残し、而して自ら来たれり場所、即ち、 星辰の間にありしグリュ=ヴォに還れり。彼はルルイエの館にて永久に夢見るままに横たわれど、彼の全ての下僕なるもの万難を排して ルルイエを目指し、恐るべき力を秘めし旧神の印に触れること能わずと云えど、周期帰還し、彼の解き放たれて再度地球を取り囲み、 地球を己が王国となし、旧神をば新たに打ち倒すことを知れば、彼の目覚めを待ち望みたり。さらに言えば、彼の兄弟にも同様のこと 起こり、自ら刃向いし者らに捕らえられ、流刑に処せられぬ。名付けられざるものは星辰の彼方の深外の空間に追放され、残る者らも 地球よりことごとく追われけり。炎の塔の形の内に来れり者ら、また元の地に戻りたれば、絶えて姿を見ること能わざれど、地球には 安らぎ訪れ、旧支配者の下僕等集いて旧支配者を解き放つべく方途を探り、人が秘密に包まれし禁断の場所を窺いて門を開けるを待つ 間は、その安らぎ破らるること無からん。

 旧支配者につき、彼等門にて待ち構え、其の門こそ全ての空間にして時間なりと記されけり。何となれば、彼等時間と空間の何たるか を知らざれど、現れずとも、全ての時間と空間に存在すればなり。彼等の内には形状、特徴、本来の形、顔を変えられし者あり、彼等に とってはいたる所が門なり。されど余が開かんとした第一の門は砂漠の下なる円柱都市アイレムにあり。しかれども人が石を築いて禁断 の言葉を三度口に致せば、あらしめるべき門たちどころに現れ、門を抜けて来るべき者等到来致さん。そはドール、忌むべきミ=ゴ、 トゥチョ=トゥチョ人、深き者ども、ガグ、夜のゴーント、ショゴス、ヴーアミス、凍てつく荒野のカダスとレン平原を護りしシャンタク なり。旧神の子等は全て似たりけるが、大いなるイースの種族と旧支配者、意見をたがえて旧神に刃向い、旧支配者が地球を掌中に 収めるかたわら、大いなる種族はイースから戻りて、いま地球を歩みおる人には未だ知られざる、時間を先へ進みし地球の土地に在所を 定め、先に自らを駆り立てし風と声が再び来り、風の上を歩みしものが地球及び星辰の間なる空間を永久に覆いつくさん時を待ちたり。

 旧支配者の復活

 やがて彼等は復活せり。この大いなる復活の時、大いなるクトゥルーは海洋の下なるルルイエより解き放たれ、名づけられざるもの ハリの湖近くのカルコサなる己が都より来り、シュブ=ニグラス現れて悍ましさを倍化し、ナイアーラトテップ旧支配者とその配下に 言葉をもたらし、クトゥグア刃向かう者らに手をかけて破壊し、盲目の白痴にして有害なるアザトース無限と呼ばれる全てのものの中心、 泡立つ不敬の言葉を吐きつづけておりし所、全てが混沌として破壊されん世界のただ中より現出し、一にして全、全にして一なるもの ヨグ=ソトース己が天球を運び、イタカまた歩み、地球の内なる暗澹たる洞窟よりクトゥグア到来し、しこうして彼等共に地球並びに 地球に生きる全てのものをわがものとなし、大いなる深淵の主、彼等の復活を知らされ、兄弟達と共に邪悪を放散致すために来たらん時、 彼等旧神と戦う準備を致さん。